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【処理水の影響】2023年9月中国インバウンド最新動向


結論から申し上げると、処理水問題の影響は限定的かつ短期的であると想定しております。

処理水問題に関して、メーカー様よりご相談をいただいておりますので、FindJapan社としての見解をまとめました。


本件、朝日新聞社に取材協力し、2023年9月1日に掲載されました。


目次[非表示]

  1. 1.不安な中国人と海外旅行する中国人
  2. 2.処理水問題によるインバウンドへの影響(最大10%以下)
  3. 3.中国インバウンド消費はいつ戻る?



不安な中国人と海外旅行する中国人


縦軸に情報リテラシー、日本リテラシー、横軸に収入でマトリックスを作ると、報道で目にするような行動に走る人々は多くの場合左下に属し、その対極に訪日客が位置します。

汚染水問題中国インバウンドへの影響

左下に位置する人々は日本企業のターゲットではなく、かつインバウンドとも関係のない人々です。日本で目にする中国人観光客は人口比5%のパスポートを持った少数であり、その中でも日本に来るというのは1%以下のごく一部の富裕層かつ知識層であると考えられます。

つまり、いたずら電話する人達と日本に来る人は属性が全く異なります。

特にコロナ明け早期より海外旅行を検討・遂行している人々は、自分でビザや検疫について調査することができるという点で中国人全体の中でも富裕知識層の中の富裕知識層と言えます。これらの人々は理知的な情報判断が可能で、複数の情報ソースから情報を取捨選択する高い情報リテラシーを有しており、その情報収集力は日常的なショッピングにおいても発揮されています。

2012年の反日デモの際も影響は限定的かつ短期的であったという過去もあり、訪日客の消費が低迷するとしたら中国国産ブランド(国潮)の台頭や他国ブランドとの競合、インバウンドでの店舗売上が越境ECへと移行したといった別要因が想定されます。



処理水問題によるインバウンドへの影響(最大10%以下)


海産物等の直接的な影響以外のインバウンド領域での影響は以下が想定されます。

・中国訪日観光客の回復の遅れ(最大3か月程度)
2019年水準を超過時期目安:2023年12月→2024年3月
※現状より訪日中国人客数は減らない 継続的な増加見込み

・一部団体旅行客のキャンセル(限定的)
ざっくり計算で、団体旅行客比率が20%、旅行代理店でキャンセルが30%だとすると、中国人訪日客全体の6%がキャンセルすることになります。先日の団体旅行解禁のニュースで盛り上がっていますが、データから見ると個人旅行客がほとんどです。さらに旅行代理店経由でビザ申請しても訪日後は個人で自由に旅行する形式もあるので、バスから大量に下りてくる中国地方都市おばちゃん達は実はレアな存在です。


ポイントは情報伝播のピラミッドです。これは中国プロモーション時に戦略的にブランドを浸透させる際に活用している考え方です。影響を予測する場合、情報の上流となる消費者がどのような行動をとるかを観測すると、情報の下流の人々の行動が見えてきます。

処理水問題情報の伝播

登場人物は4人
①インフルエンサー
②海外旅行リピーター
③海外慣れしていない高齢者
④海外旅行しない/できない人々

情報は①→②→③へと伝播していきます。
①の人々はすでに海外旅行を再開しています。
②の人々は①の人々が海外旅行を再開しているのを見て、旅行計画を立てています。
③の人々は身近な②の人々のサポートもしくは団体旅行にて訪日します。
④の人々は処理水問題が心配です。情報リテラシーが高くないので感情的な行動をします。
③の周りには④の友人がいるので、マジョリティである④の人々からの声の影響を受けます。
今回の処理水問題でキャンセルが発生するとすれば③の人々です。

初海外・初日本旅行でもともと不安な上、懸念材料として処理水問題が発生し、③の周りで適切な①②が存在しない場合、意思決定時に④がマジョリティとなりキャンセルという行動をとります。

①②の人々の旅行控えの兆候は見えない、また航空各社のアクションも見えないことから、大きな影響があるとは考えにくいです。

その他、消費以外にも日本企業として留意しておくべきは①②の人々が「来週から日本いくぜー!」「和食うまいー!​​​​​」の投稿を一時的に自粛する可能性があります。

④の知り合いからのツッコミ「行って大丈夫か?こんな時にいくのか?」の懸念と、コロナ明けのお土産代理購入依頼「日本行くなら〇〇と××買ってきて」の二つの面倒が発生します。これによって自慢型のソーシャル投稿から<お忍び型旅行>に変化すると予測しています。



中国インバウンド消費はいつ戻る?

現状中国人訪日客の回復率は13%(2019年上半期対2023年上半期)2023年6月単月では回復率24%、中国人の出国者数回復率は50%となっており、そもそも中国人がまだ海外旅行のリハビリ段階にあると言えます。

以下は、各国の統計より取得した中国人の出国先データです
※中国政府としては中国人の出国先データを公開していない

中国人の海外旅行先

2019上半期
2023上半期
回復率
全体
8,1290,000
40,970,000
50%
香港
27,573,517
10,110,750
37%
マカオ
14,314,457
20,185,000
141%
タイ
5,650,000
1,300,000
23%
日本
4,532,500
594,600
13%

※参照元
全体    https://baijiahao.baidu.com/s?id=1642800215882371885&wfr=spider&for=pc
香港    https://partnernet.hktb.com/tc/research_statistics/tourism_statistics_database/index.html
マカオ    http://mo.mofcom.gov.cn/article/tjsj/zwminzu/201909/20190902897362.shtml
タイ    https://baijiahao.baidu.com/s?id=1770743531973034593&wfr=spider&for=pc
日本    https://cn.nikkei.com/politicsaeconomy/politicsasociety/36520-2019-07-18-13-04-34.html

中国旅游研究院の2023年2月の発表では、2023年末で出国者9000万人予測となっていますが、海外旅行リハビリ期間ということもあり2019年上半期51%→2023年上半期75%となっており、香港マカオ以外への海外旅行がまだ進んでいない状態です。

まずは、心理的にも地理的にも近く、ビザ(通行証)も比較的容易に取得可能で、団体旅行解禁第一弾入りしている場所を選んだという自然な行動の結果です。

中国人の訪日時期は大きく分けて4期間。

①旧正月②桜の季節③夏休み④国慶節 本来は10月の国慶節に合わせて回復といきたいところでしたが次は①旧正月のタイミングが期待できます。




処理水問題で中国インバウンドに影響!爆買いモノ消費壊滅か?

という見出しが多いようですが、2024年旧正月の完全回復に向けて今後の訪日中国人客数は順調に推移していくはずなので、観光庁の統計発表と、リアルな訪日客ハイタオユーザーの消費者行動を観測して理知的に情報と向き合っていきます。今後は観光統計の解説動画も作成予定です。

現在中国出張中のメンバーより、SNSプラットフォーム周りの変化も察知しております。
ここではお伝え出来ない最新の中国マーケティング情報もありますので、具体的な課題をお持ちのメーカー様・小売り関係者様は、お問い合わせよりご連絡ください。

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Find Japan 編集部
Find Japan 編集部
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